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<寄稿>コロナ下の家庭の中で~DV相談からみえてくるもの~
コロナ下でDV相談が増加しています
新型コロナウイルスにおけるストレスの増大や、外出自粛や在宅勤務により自宅で家族と過ごす時間が増えたことで、全国の配偶者暴力相談支援センターでは相談件数が増加していると報告がされています。このような背景には何があるのでしょう。
今回は、日ごろよりDV被害者支援に尽力されているNPO法人アジア女性センターに寄稿文を執筆していただきました。
執筆団体:NPO法人アジア女性センターの紹介
アジア女性センターは、女性が直面する問題に関わり、支援活動を行うために設立されたNPO法人です。本市においては電話や対面での相談業務を委託しています。
福岡県の「男女共同参画団体賞」や福岡市の「福岡市市民国際貢献賞」、2019年12月には法務大臣表彰「人権擁護功労賞特別賞ユニバーサル社会賞」を受賞しています。
NPO法人アジア女性センターホームページ<外部リンク>
<寄稿>コロナ下の家庭の中で~DV相談からみえてくるもの~
新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活にさまざまな影響を及ぼしています。
多くの人が在宅でのテレワークを経験し、学校や保育園、幼稚園は長期休業しました。誰もが、これまでにない不安やストレスにさらされる生活を余儀なくされています。日本より移動の自由が制限されたヨーロッパではDVや児童虐待の相談・通報が急増し、国連のアントニオ・グテレス事務総長は4月に、「すべての政府に対し、女性への暴力に対する防止と救済を、コロナに向けた国家規模の応急対応のための重要項目とするよう要請します」と声明を出しました。世界の動きを受け、国内でも内閣府が24時間対応の「DV相談+(プラス)」をスタートさせ、特別定額給付金の支給においてもDV被害当事者への配慮を盛り込むなどの取り組みを打ち出しました。
しかしこの問題を巡っては新型コロナウイルスによってDVや虐待が生み出されているかのような伝え方が一部でされていますが、本当にそうでしょうか。潜在化していたものが一気に表面化したととらえる必要があると考えています。
『DV』を改めて説明すると、親密な関係のパートナー間に起こる暴力行為です。アジア女性センターは日頃から困難を抱える女性からの相談を受けていますが、その中で最も多いのがDVについての相談です。DVは次のように分類されます。
DVとは固定化されたジェンダー感覚をもとに、二人の間にある力関係を利用しさまざまな方法や形態でパートナーを“支配”する行為をまとめて指します。
新型コロナウイルス流行後、DVのつらさを訴える相談がさらに増加しました。春以降の具体例をあげます。
相談内容(例)
- 以前から物を投げられたり叩かれたりしている。離婚を考えてきたが、新型コロナウイルスの影響で今後の見通しが立たず先に踏み出せない。
- 元々嫉妬深く、金銭管理も細かいパートナー。新型コロナウイルスの影響で帰宅時間が早くなり一緒にいるのが苦しい。
- 勤務先から日に何十通もメールを送り付け、行動を監視されていた。春以降在宅ワークになり、さらに監視が厳しい。気分転換の習い事や友人との交流の機会もなくなった。
- 娘がその夫から暴力を受けている。新型コロナウイルスの影響で夫婦共に在宅勤務になり暴力が酷くなっているのではと心配。
- 生活費が十分に渡されていない上に、特別定額給付金までも家族全員分を夫が独り占め。
一連の相談から見えてくるのは、新型コロナウイルス流行前から二人の間に暴力があり、「新型コロナウイルスによるストレス」や「勤務や生活スタイルの変化」が口実にされ、力の不均衡の度合いが増している実態です。女性は非正規労働で雇用されることが多く、収入が男性よりも不安定です。特別定額給付金の問題などで分かるように、経済的DVでさらに女性たちは追い込まれています。新型コロナウイルスの流行は、社会の中で女性が経済的弱者に位置付けられているという現実を浮き彫りにしました。
在宅ワークの増加によって家庭で過ごす時間が長くなる一方で、保育園や福祉施設等が休業などしたことも問題を深刻化させています。内閣府が実施した「満足度・生活の質に関する調査」によると、新型コロナウイルス感染の前後を比較すると、男女ともに満足度が下がっているのですが、女性の方が男性よりも低下の幅が大きくなっています。家庭内でやることが増えた育児や介護の作業については、旧来の性別役割分業を当たり前とする発想のまま、在宅ワークで仕事を抱える女性にのしかかっている現状がうかがえます。私たちのところにも、パートナーから「十分にやれていない」「能力がない」とさらなる負担を求められ、悲痛な思いにくれる声が届いています。
新型コロナウイルス感染拡大の中、誰もが不安な気持ちを増幅させています。
「シングルマザーとしてやっと二人の子を育てあげたのに、一息もつけず苦しさしかない。虚しさが募る」「子どもが不登校なのに休校が長期化し、将来が展望できない。親である自分も自信が持てなくなっている」という相談もあります。
先の見えない大きな不安に覆われる今こそ、求められているのは新しい生活様式の確立です。仕方がないと諦めず、生活を振り返り、夫婦やパートナー、家族の関係性が安全、安心できるものかどうか立ち止まって考えてみませんか。
電話だけでなく様々なツールで相談できます。誰かに相談したくなった時は専門機関を活用してください。
内閣府 DV相談+(プラス) |
電話番号:0120-279-889 (24時間 365日対応) チャット相談は専用ウェブサイトから DV相談プラス<外部リンク> |
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ちくし女性ホットライン | 電話番号:092-513-7335(月曜日・水曜日・木曜日・金曜日12時から19時まで、土曜日10時から17時まで(祝日、年末年始を除く)) |
太宰府市女性相談窓口 |
電話番号:092-921-2168(直通)(月曜日から金曜日9時から17時まで(祝日、年末年始を除く)) |